世界には、素材、食感、大きさ、歯ざわりなど色々な種類のパンがあります。
パンの種類を国ごとに分類して、それぞれのパンの歴史、特徴を紹介しています。日本独自のパンもたくさんあります。
フランスのパン
フランスのパンは大きく分けて3つに分ける事ができます。1つは食事系のパン(バケットなど)、2つめは副材料の多いリッチなパン(クロワッサンなど)、3つめはは田舎パン(パン・ド・カンバーニュなど)のパン。
食事系のパンは、小麦粉にパン酵母、塩、水を加えたシンプルな生地で、タンパク質が少ないため、パンの外皮が香ばしく、中は軽い食べ口。できるだけ焼き立てを食べるのが理想です。大きさや密度が違うことで同じ生地でも味わいは色々です。
また、お食事パンの代表でもあるクロワッサンやブリオッシュは、おやつや週末の朝食にたべる贅沢なパン。
カンパーニュは、素朴なパンで天然酵母でじっくり発酵させるため、独特の風味や香りがあり、日持ちがします。
パン・トラディショネル
いわゆるフランスパン。小麦粉・水・塩・パン酵母のみで作られるシンプルなパン。バケットやバタール、フィセルなど長さによって名前が変わるバケットは『杖』・『棒』という意味。バタールは『中間』の意味で、写真では、長い方がバケット、短い方がバタール。バケットは外皮(クラスト)を、バタールは中身(クラム)が食べたい人向け。焼き立てほどおいしい。生地は同じなのに形や重さでパンの表情や味わいが変わるのが魅力。
クープ(表面の切り込み)がよく反り返っているものがおいしいとされている。
エピ
バケットと同じ生地を棒状以外の形にしたパンの1つ。
エピは、『麦の穂』という意味。細長く成形した生地に切り込みを入れ、左右互い違いに開いて焼いたもの。外皮も中身も堅くて歯ごたえがあり、噛めば噛むほどうまみが引き出される。
エピは手でちぎって食べるのが一般的。ワインにもよく合う。
クロワッサン
のばした生地にバターをのせ、何度も折り込んだ、生地とバターの層からサクサクの食感が生まれる。
元々は、オーストラリアのパン。トルコ軍を撃退した記念に、トルコの旗印である三日月形のパンを焼いたのが始まりとされる。ハード系のパンだったが、マリー・アントワネットの嫁入りでフランスに伝わり、20世紀始めに折込み生地が考えられた。バターを増やして生地の発酵を抑えるとより薄く、パイ生地に近いものになる。
パン・オ・レザン
クロワッサン生地にカスタードクリームを塗り、レーズンを巻き込んで輪切りにして焼いたパン。断面の渦巻き形からエスカルゴとも呼ばれ、フランスでは、朝食の菓子パンとして人気。
ブリオッシュ
バター、卵、砂糖を使ったふんわり膨らんだ17世紀初めにノルマンディー地方に生まれたパン。お菓子として位置づけされていた時代もあり、バターの風味とやわらかな食感が楽しめるリッチなパン。
形はいくつかの種類があり、僧侶をかたどったブリオッシュ・ア・テートを代表に、王冠型、円筒型、箱型など。フランスでは、クリスマスなど特別な日に食べる習慣もある。
パン・ド・ロデヴ
南フランスの小さな街・ロデヴが発祥。現地では、『パン・パイヤス』という名前で親しまれている。水分を大量に使って生地を仕込み、ほとんど成形をせずに焼く。
クラストはカリッと、クラムは空洞がありモチモチ。日持ちがするパン
パン・ド・ミ
パン・ド・ミは『中身のパン』という意味。フランスパンの生地に砂糖や油脂を若干配合し、パン型にいれて焼いたパン。
日本の食パンほどふわふわではないもののやわらかく、適度な噛みごたえと小麦粉ベースの風味が特徴。トーストすると外がサクサク、中はしっとり、もっちり。
パン・オ・ショコラ
クロワッサン生地に棒状のチョコレートが包まれたパン。フランスでは朝食やおやつの定番。焼き立てはサクサクの生地にとろけたチョコレートが絡んでおいしい。
パン・ド・カンパーニュ
フランス語で『田舎パン』の意味。パリの近郊の田舎で作れられていたパンをパリまで売りにきた、あるいは都会の人が田舎をイメージして作ったと言われている。
ライ麦を10%ほど加えた生地を、ルヴァン種という天然酵母でゆっくり発酵させるのが伝統的。外は香ばしく、中は大小の気泡がありしっとりしていて、独特の酸味がある。形は、丸形、なまこ形、棒状のものなど色々。
クグロフ
クグロフ型(斜めにうねりのある蛇の目型)にスライスしたアーモンドやレーズンをいれて焼き上げたブリオッシュ。クグロフは『大司教の帽子』という意味でその焼型のこと。
フランス・オーストリアのクリスマスには欠かせないパン。
クイニーアマン
フランスのブルターニュ地方の伝統菓子。独特のサクッとした食感とバターの風味が特徴。バターの風味と塩味、砂糖の甘味の絶妙なバランスを楽しむことができる。
カヌレ
『溝をつけた』という意味のフランス・ボルドー地方の伝統菓子。外は黒くて固く、中はしっとりやわらかい。
ワイン作りの澱引き工程で大量の卵白を使うため、その時に余る卵黄を利用してつくられるようになったそう。
イタリアのパン
パスタの国イタリアですが、パンの種類も豊富。南北に細長い地形から、各地域で収穫される農作物や食文化と結びつき、色々なパンが作られてきました。
イタリアのパンは、そのままより、料理と合わせたりオリーブオイルやパスタソースにつけて食べることが多く、パン自体は塩分控えめで作られている事が多いです。
パニーニ
パニーニはイタリア語で『サンドウィッチ』の意味。パニーノが単数形でパニーニは複数形。
日本では、具材をはさんだパンに縦縞の焼き目をつけたホットサンドウィッチを指すことが多い。中には、ハムやチーズ、レタスなどが挟まっている。
フォカッチャ
イタリアでは人気のある平たいパン。『フォカッチャ』=『火で焼いたもの』の意味。ピザの原型ともいわれ、オリーブオイルの風味と岩塩がポイント。
イタリアでは、大きなスクエア形に焼、切り分けて食べることも多い。生地にオリーブオイルが練り込んであるので、時間が経つと油脂分が表面に現れる。食事パンとしてよく食べられる。 →フォカッチャの作り方
グリッシーニ
イタリアのレストランでは最初に運ばれてくる卓上パンとしておなじみでワインのおつまみとして人気。細長いクラッカーに近いポリポリとした硬さがありあっさりした塩味。
長期間の保存が可能。生地の中にごま、パルメザンチーズを入れたり、焼きあがりパンに生ハムを巻いて食べることが多い。 →グリッシーニの作り方
チャバッタ
細長くて平らな形からチャバッタは『スリッパ』の意味。パリッとした外皮(クラスト)とみずみずしい中身(クラム)が特徴。
牛乳やバター、油脂も使わないのでヘルシー。発酵時間が長く、若干の酸味と独特の風味がある
ドイツのパン
言わずとしれたパン王国ドイツ。一人当たりのパン年間消費量もヨーロッパトップクラス。ライ麦パンが主流ですが、パンの種類は主なもので約200種類。寒冷な北部地域では、こってりした料理に合う酸味の強いパンが好まれ、南部では、小麦の栽培が盛んなため、小麦粉がメインのパンが多く作られています。
ブレッチェル
ドイツのパン屋のシンボルにもなっているユニークな形。本場ドイツのビアホールでは、テーブルまで売りに来るほどポピュラーなパン。
ブレッチェルはラテン語で『腕』という意味。太い部分はもちもち、細い部分はカリっとした食感。ドイツのビールにも合い、表面についた岩塩を手で軽く払い落として塩気を調節して食べる。
塩味が主流だが甘いのもある。
白パン(ブレッチェン)
ロッゲンシュロートブロート
シュロートとは『粗挽きの穀物』のこと。胚芽を取り除いてないライ麦全粒粉をメインにしたパン。食物繊維や栄養価が高くヘルシー。少しでも食べごたえがある。
ベルリーナ・ラントブロート
『ベルリン風の田舎のパン』。最終発酵で表面を乾燥させることで表面にひび割れを作り、模様ができる。パン生地は、ライ麦の配合が7~80%で、酸味がある。薄くスライスして、煮込み料理と合わせて食べたり、サンドウィッチにしたり。バターやチーズと合わせると酸味が抑えられる。
オーストリアのパン
パン作りにおいて、ヨーロッパ各国に大きな影響を与えてきたオーストリア。フランスのクロワッサンやブリオッシュ、デンマークのデニッシュなど、実はオーストリア発祥という説もあります。
定番のテーブルロール他。ライ麦、雑穀パンも多い。
カイザーゼンメル
ザルツシュタンゲン
イギリスのパン
島国のイギリスでは、イングリッシュ・ブレックファースト、サンドウィッチなど大陸とは異なる独自のパン文化があります。
イングリッシュマフィン
マザーグースの童謡にでてくるイギリスの伝統的な型焼きパン。小麦粉、牛乳、酵母、砂糖を入れて、専用の型に入れて焼き上げ、食べるときに、もう一度、トースターやグリルでこんがり焼く。
見た目が白っぽいのは、トーストして食べること前提のため。食べる時に表面をこんがり焼いても内側はもっちり。エッグベネディクトにも使う。
スコーン
発酵のいらないクイックブレッド。18世紀、貴族の間で流行したアフタヌーンティーで紅茶と一緒に食べられるようになった。ベーキングパウダーを使って小麦粉、バター、牛乳、砂糖を混ぜた生地で捏ね上げ、抜き型でぬいてオーブンで焼いて作る。ジャムやクリームをつけて食べる。
ロシアのパン
広大な大地に根付く、郷土へのこだわりが生んだ独特の料理と素朴なパン。
ピロシキ
ロシアのファストフード。コース料理で出る時は、ザクースカと呼ばれる前菜として扱われている。日本のピロシキはひき肉や春雨などを炒めたものをパン生地で包、油で揚げたものが主流だが、ロシアのピロシキは、バラエティー豊かで、オーブンで焼いたもの、中身もこれといった決まりはない。
アメリカのパン
移民の歴史から生まれ、今や世界の中心となったアメリカのパン文化。ニューヨークのパンは世界の流行をリードします。
べーグル
ユダヤ人の間で食べられていたものを1900年前後、アメリカに移住した人々が製法を伝えたと言われている。
一度お湯で茹でることで引き出されるもちもちの食感が特徴。卵や油を仕様しないため、低カロリー、低脂肪のわりにたべごたえがあり、ニューヨーカーの間でもてはやされ、日本でも人気に。
生地にフルーツやシナモンなどを混ぜたものも多い。
バターロール
生地にバターがたっぷり入ったパン。テーブルロールは小型の食事パンのことですが、日本ではバターロールがテーブルロールの定番。バターの風味とやわらかい口当たり。サンドイッチとしても。
シナモンロール
スウェーデンが発祥とされるパン。ボリューム満点。巻き込んだ砂糖やシナモンが染み渡り、しっとり感やもちもち感、さくっとした歯切れのよさも楽しめます。
バンズ
ハンバーガー用のパンでおなじみの『バンズ』。ふっくらとした厚みがあり、上下で半分にカットして、間に具材をはさむ食べ方が一般的。カットした上の部分をクラウン、下をヒールと言う。
ドーナツ
小麦粉に卵、砂糖、乳製品などを加え、油で揚げて膨らませたパン。リング状になっているのは、熱の通りをよくしてムラなく揚げるため。ベーキングパウダーでふくらませる無発酵生地のドーナツはさっくりした食感でケーキドーナツと呼ばれている。
マフィン
小麦粉に砂糖、卵などをベーキングパウダーを使って膨らませる菓子パン。材料を一度に混ぜて焼くので、自宅で作るにはおすすめ。チョコチップやバナナなどを混ぜて焼くものなどバリエーションが豊富。
インドのパン
国土の広いインドでは、パンも地域によって異なります。北部はナンなど小麦粉のパンが主流。南部は米粉やマメの粉を使ったパンが多い。
ナン
インドカレーと食べるパン。少しずつちぎりながら、カレーなどの汁物につけたり、野菜を挟んだり、主食として食べます。最後にお皿をぬぐってきれいにする役割も。ナンとは、ペルシャ語でパンという意味。冷めるとかたくなるので、焼き立てがおいしい。
日本のパン
パンの歴史は浅いものの、世界各国のパンが手軽に食べれるほどパン食が浸透。日本ならではのパンもたくさんあります。体表的なのは、食パン。日本の食パンは他の国ではありえないほど、きめ細かく、ソフトな食感です。
日本らしいパンと言えば、菓子パン、お惣菜パン。ヨーロッパの菓子パンがバターや砂糖をたっぷりつかったものに対して、日本の菓子パンはあんこやクリームが入って、生地自体はそんなにリッチな材料を使ってないのが特徴。パンやコーン、チーズなどさまざまな食材を加えて作ったお惣菜パンは日本ならではのバリエーションです。
あんパン
日本人にとってパンが一般的でなかった明治時代に、木村屋の創業者が生み出したのがあんパン。日本にパンが普及するきっかけに。
角食パン(食パン)
日本を代表する食事パン。学校の給食などでも食べられています。角食パンとは、パンの四隅が直角になっている形状からきています。四角いのはフタをして焼くため。
チョココロネ
コロネはフランス語で『角』または英語で管楽器『コルネット』の意味。細長くした生地をくるくると円すい状に成形して、中にチョコレートクリームがたっぷり。
クリームパン
クリームパン誕生は、明治30年代。新宿中村屋の創業者がシュークリームのおいしさに感動し、あんパンのあんの代わりにカスタードクリームを入れたことが始まり。
メロンパン
さくさくした甘いビスケット生地をパンの生地の上にのせて焼かれたパン。なぜメロンパンというかは諸説があり、よくわかってない。関西では、日の出の太陽に似ていることから『サンライズ』とも言われています。
カレーパン
洋食のカツレツとカレーライスをヒントに汁気が少ないカレーフィリングをパン生地に詰め、カツレツのように表面にパン粉をまぶして揚げたのが始まりと言われています。誰からも愛される代表的なお惣菜パン。
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パンの種類と分類
日本では世界各国のパンが作られていますが、その種類は数百種類もあります。パンの分類については、特に統一されていませんが、国別、材料別、酵母別、食感別などで分類することができます。 このページでは、パン ...